- バードウォッチングで多くの鳥に出会う
- Bird watching allows you to encounter many birds
2025(令和7)年11月23日の朝、丹波市の氷上回廊水分れフィールドミュージアム(氷上町石生)で野鳥観察会が開催されました。参加者は大人・子ども合わせて約20名。丹波野鳥の会の梅津節雄さんと松井久信さんのガイドで、スタート地点の水分れフィールドミュージアムから高谷川に沿って西へ、2kmほど先の調整池まで野鳥を見つけて観察しながら散策しました。
出発して間もなく、ため池にはカモ類やカワウの姿が。向こう岸にいるのはカラスのようですが、梅津さんは「ハシボソガラスですね」と解説。かなり遠いのに見分けがつくとは、さすがです。
道すがら、ヒヨドリやスズメ、ツグミの姿も。JR福知山線の踏切を渡る前、参加者の若い女性が「あそこにいる!」と指をさしたのはジョウビタキ。すぐに松井さんがフィールドスコープをセット。それを覗くとなんとも愛らしい姿。おなか部分が鮮やかなオレンジ色なので、オスだそうです。


踏切を渡ってすぐのところで梅津さんが気付いたのは、イソヒヨドリ。「もともとはその名のとおり海に近いところにいる鳥なんですが、最近はこのあたりでも見かけます」とのこと。スコープ越しに見ると、空色の美しい鳥でした。
そのうちセキレイがやって来ます。「セグロセキレイは日本では当たり前にいる鳥ですが、世界的には貴重な鳥で日本の固有種なんです」という解説に、「そうなんだ」「知らなかった」という声がちらほら。
そして目的地の調整池へ。ここにはカルガモ、ヒドリガモ、コガモ、オカヨシガモ、オナガガモ、ハシビロガモといったカモの仲間が悠々と泳ぎ、コサギ、ダイサギも羽を休めています。みな思い思いに双眼鏡を覗きながらしばらく観察。「あ、オオバンがいる!」と、子どもたちも楽しそう。
帰り道は高谷川の土手にアオサギやウグイスが出現しました。水分れ橋付近でカワガラスがほんの一瞬姿を現しましたが「高谷川では、はじめて確認した」とのこと。最後は梅津さんが収集した鳥の羽や巣に実際に触れながら、丹波の野鳥についてのレクチャーを受け、この日見つけた鳥をおさらい。姿を確認したのは28種類、声だけ聞こえたのが1種類。わずか2~3時間の短い時間で、約30種類もの鳥たちに出会うことができました。
鳥と自然を見つめ続ける丹波野鳥の会
野鳥の暮らしは、環境に大きく左右されます。鳥類の多くは生態系ピラミッドの上位にあるので、野鳥を観察・調査することは自然環境の状況を推し量るという意味でもとても重要な意味があるのです。生息数や生息域の変化は、その地域の自然環境の変化のサインと解釈することができるでしょう。野鳥たちは、私たちに自然保護の大切さを伝えるメッセンジャーでもあるのですね。
長年、丹波をフィールドに観察を続けてきた丹波野鳥の会は、この地の自然の状況を知るための基礎データを調査により収集。また、今回のバードウォッチングのように、市民が野鳥と親しむさまざまな機会のサポートもおこなっています。
丹波野鳥の会の梅津さんと松井さんに、活動について、野鳥観察の楽しさについて、丹波の野鳥や自然についてお話をうかがいました。

- 松井久信氏

- 梅津節雄氏
- Q1
- 丹波野鳥の会とはどのような会ですか。

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梅津
2000(平成12)年11月に結成し、現在のメンバーは20名ほどです。
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松井
メンバーはみな丹波市・丹波篠山市在住です。
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梅津
定期観察会を年に4回ほど開催し、ホームグラウンドとしているのは氷上町佐野の南小学校の周辺です。
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松井
ほかにも市島町の友政(とんまさ)や、水分れ公園の周辺、柏原町の鐘ヶ坂のあたりでも開催しています。
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梅津
ホームグラウンドがなぜ南小学校周辺かというと、丹波野鳥の会の前身がここで活動していたからなんですよ。1996(平成8)年頃でしたかね。私がPTAの役員で南小学校にお世話になっている時に、松井さんが教頭先生だったんですね。それで、懇親会でお互い自然が好きということで意気投合して、南小学校の先生方や保護者の方、ご近所のみなさんと観察会をはじめたんです。南小学校の周辺は「水鳥の里」とよばれているんです。
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松井
丹波市内でも、あれだけ鳥が集まってくるところはそうないんですよね。その観察会がきっかけとなり、最初「沼貫(ぬぬぎ)野鳥の会」が発足し、それが発展して丹波野鳥の会になったんです。
- Q2
- 丹波野鳥の会ではどのような活動をおこなっていますか。

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梅津
先ほどお話しした定期的観察会のほか、今回の水分れフィールドミュージアムの観察会、「丹波自然の会」や「篠山自然の会」の野鳥観察、氷上町南小学校区の沼貫自治振興会主催のバードウォッチングなどのガイド役を務めています。また、調査活動もおこなっていまして、環境省の全国一斉ガン・カモ調査、日本野鳥の会のモニタリングサイト1000の鳥類の調査、認定NPO法人バードリサーチの繁殖分布調査などに協力しています。いま食害などで問題になっているカワウの調査も手がけています。
- Q3
- 野鳥に興味を持ったきっかけは。

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梅津
小学生の頃、隣村の友達のところへ遊びに行ったら、雪の積もった真っ白な畑の中に1本の杭があり、その上に青い鳥がいたんですよ。ルリビタキのオスで、それを見て「この世にこんなに美しいものがあるのか」と感動したのがきっかけです。本格的にバードウォッチングをはじめたのは30歳くらいからで、カモとかを観察しに行きましたね。南小学校近辺でヤマセミを見かけたので、絶対その写真撮ろうと思って、300ミリくらいの望遠レンズとフィルムのカメラを買って。河原の柳の木に来る時間帯もだいたいわかってきて、古い布切れかぶってカムフラージュして近づいて。来る時は「キャラ!キャラ!」って鳴くんですよ。撮れた時は嬉しかったですね。
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松井
僕は南小学校に着任してからなので、バードウォッチング歴は30年近くになります。子どもたちと2階の図書室から川を覗くと、カモが泳いでいるのが見えるんですよ。たまたま南小学校は愛鳥校だったので、以前からいろんな観察道具が揃っていたし、僕も自然が好きで双眼鏡を持っていたので、それで子どもたちに川にいる鳥を見せていました。図書室ですから図鑑もあるので、あそこにいる鳥がここに載っているね、という感じで、図書の時間に観察していたんですよ。それをずっと、転勤先の学校でもおこなっていました。梅津さんがヤマセミの話されましたけれど、上久下小学校(山南町青田)では朝にヤマセミとカワセミが来るんですよ。ちょうど登校指導していたので、子どもたちに「あそこにいるよ」と。南小学校へは今も年3回、 3年生の総合学習の野鳥観察のお手伝いに行っています。
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梅津
松井さんは鳥だけでなく、ほかの動物や植物にも詳しいんですよ。かつて青垣いきものふれあいの里(青垣町山垣)の施設長もされていましたしね。
- Q4
- 野鳥観察の魅力とは。

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梅津
やっぱり色が綺麗ですね。鳥は目がものすごく良くて、人間に見えていない色まで見えていると言われています。カラスは人間には黒しか見えないけど、鳥の目で見ると違う色が見えているというデータがあるので、個体識別もしているのではないかと。野鳥は基本的に昼行性なので、観察がしやすいというのもあります。
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松井
1年以上そこに生息している鳥もいますけれど、その季節でないと来ない、見られない鳥と出会うというのも魅力ですね。そういう鳥は渡り鳥ですが、小さな鳥が何千キロも飛んでやって来ると思うと、すごいなと感動するんですよ。いろいろな鳥を見つけて、それらがどんな鳥かと調べ、比較して違いを考えると不思議で。学ぶことでより野鳥の魅力が感じられます。
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梅津
たくさんの種類がいるというのも、観察していて面白いところですよね。僕は小鳥も好きですけれど、猛禽類もまた好きなんです。クマタカが飛んでいる姿は、斑紋*とか翼の模様とかものすごい綺麗なんですよ。
- Q5
- 野鳥を見つけるコツを教えてください。

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梅津
まずは声ですね。それから、風景、景色の中に鳥がいるとちょっと違う感じがするので、そういう違和感を感じるように注意することです。まずは肉眼で見つけてから双眼鏡~フィールドスコープというように、全体を見てその中で見つけて絞っていくという感じですね。あとは経験です。観察を続けていくとだんだんと、環境を見ただけでここにはどんな鳥がいるとわかってくるんですよ。
- Q6
- 丹波ではどのような野鳥を見ることができますか。

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松井
私たちの調査では、171種類を確認しています。これは全国的にも多い数だと思います。1年中見れるもので代表的な鳥はスズメやカラスのほか、旧氷上町の鳥のヒバリ、エナガ、サギ類ではコサギ、ダイサギ…
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梅津
同じ白いサギでも、コサギとダイサギは留鳥ですが、チュウサギは夏鳥なんです。
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松井
春から夏にかけての代表的な鳥はツバメですね。
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梅津
ツバメは3種類、ツバメにイワツバメにコシアカツバメですね。夏鳥はサンコウチョウ、キビタキ、オオルリ。秋から冬はやっぱりカモ類ですね。一番多いのがヒドリガモ。マガモやカルガモも増えます。コガモ、ヨシガモ、オカヨシガモ…
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松井
ハシビロガモ、オナガガモ、割と多いですね。
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梅津
海ガモ類で今日は見かけなかったですけれどキンクロハジロ、ホシハジロ、アイサ類では希少種のカワアイサ、そして渓谷のオシドリ。そして冬鳥の代表格はジョウビタキ、ルリビタキ…
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松井
ツグミも冬に見かける鳥ですね。
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梅津
山の奥の方になりますが、丹波市には猛禽類の繁殖地もあります。
- Q7
- 丹波野鳥の会が活動をはじめて20年以上になりますが、
見かける鳥に変化はありますか。

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松井
今日のバードウォッチングでも見つけましたけれど、イソヒヨドリは昔いなかったのですが、最近入ってきて、留鳥になっていますよね。もともと海辺にいる鳥なんですが。
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梅津
イソヒヨドリは飛ぶ力が大きいので、生息域を拡げてきたのでしょう。家の屋根を磯の岩場に見立てているようで、割と家の中にも入ってくるんですよ。カワウも増えています。これは、河川管理が進んで獲物の魚も増えて生息しやすくなってきているからだと思います。逆に減っているのはスズメとコサギですね。
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松井
アマサギとかゴイサギもかなり減っています。
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梅津
コサギが減っている理由は捕食圧**で、オオタカなどの猛禽類のエサになっているといわれています。でも、オオタカが増えているかというと、そういう感じではないのですけれどね。スズメも同じく捕食圧で減っているようですが、都会の方では増えているという話を聞きます。僕らが子どもの頃は、秋の稲刈りの頃になるといっぱいスズメが飛びまわっていたんですが。
- Q8
- 本州で一番低い中央分水界があることと、丹波の野鳥とに 何か関係はありますか。

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松井
鳥は高いところを飛びますから、南北に行き来するのにわざわざ氷上回廊を通るというのは考えにくいですね。鳥の移動距離はとてつもなく長いですし、中央分水嶺が飛行の障壁になることはないと思います。
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梅津
でも、猛禽類は山脈が連なっているところを渡っていますので、水分れが東西の通り道になっている可能性はありますね。山があったら上昇気流が発生するので、タカはそれをとらえて高いところへ上がっていき、スーッと滑降していく。それを繰り返して飛んでいくんですよ。丹波あたりでは、野鳥が春は西から東、秋は東から西へと渡っていきます。丹波で多くの野鳥が見られるのは、東西の通り道になっていることもひとつの理由なのかもしれません。あと、丹波はもともと水が豊かなところですし、しかも民家に近いところに池があるため鳥獣保護区になっているので、水鳥が多く飛来しています。
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松井
人間の暮らしと自然が近いという丹波の特徴が、水鳥にとって良い条件になっているのでしょうね。
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梅津
野鳥は、その地域の自然のバロメーターです。丹波には猛禽類が住んでいますが、それはそのエサとなる動物がたくさんいるということなんです。例えば、クマタカはカエルやヘビ、ほかにはノウサギなど小型の哺乳類、ウグイスやヤマドリといった鳥類なんかも食べるんですけれど、そういうエサとなる生きものは昆虫とか植物とかを食べていますよね。
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松井
カワセミは水がきれいなところに生息し、小魚やエビとかを食べています。その小魚やエビは水草や藻、水生昆虫などを食べていますが、丹波は水生生物の宝庫でもあるんです。
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梅津
そういった生物多様性を養う土地の力が、丹波にはあるのではないでしょうか。
* 斑紋 色や濃淡の違いによるまだら模様や、地の色の上に広がる模様
** 捕食圧 ある生物群が、捕食者によって食べられてしまうことによっておこる作用


























